ある雑誌のニセコ特集に、インタビューを受けました。
この章は、そのインタビュアーさんの書いた文章です。
自分たちで、一から出来るものをやってみたい
ニセコ町ポテト共和国。そこは、ニセコアンヌプリスキー場のゲレンデサイドにある、小さな国。木立や花々に囲まれて点在するペンションが、家庭的な暖かさを感じさせる、心惹かれる風景をつくっています。
「ここに泊まって、良かった。という満足感を感じていただければ、、、そのために、お客さん1人1人の要望や、目的をくみ取って対応する。または、お帰りになるまでの滞在時間を、いかに演出するか心掛けています。
”これ、いいですよ” と押しつけるのではなく、お客さんの思いをつかんで、ふっと戻してあげる感じで、、、、」
生まれ故郷、大阪のイントネーションで軽やかに”もてなし”の極意を語るmilkyさんは、ポテト共和国の顔役。ニセコに惹かれ、ニセコで暮らし、ニセコの魅力をグローバルな視点で発信し続けています。
一帯の自然、産業、歴史にも精通するmilkyさんがニセコの魅力を語るとき、基本的に据えているのは、自らの感動体験。
しぼりたてのミルクの自然な甘み、早朝、眼下に広がる 雲海の光景、霜が降り、枯れた草が朝日を浴びてキラキラ輝く様など、語るほどに言葉が弾み、豊かな物語がひもとかれていきます。
ミルキーハウスで、25年間おこなっている「早朝の牧場ツアー」はここの看板イベントです。これを目当てに宿泊する人もたくさんいて、milkyさんのアイデアやこだわりが、ぎっしりのエコツアーです。
春や、秋には、雲海がたなびく早朝6時にマイクロバスで出発。友人の牧場に、朝食用のしぼりたてミルクを取りに行き、季節ごとの、旬のニセコを紹介していきます。
福寿草の開花・カタクリの群生・一面のジャガイモ畑の開花・大きなヒマワリ畑・ハーブ園で朝の香りを楽しんだり 朝一押しのビューポイントを巡っていきます。1時間あまりの行程には、牧場でアルプホルンを演奏する、スペシャルメニューも。とっておきの時間を共有する感動体験が、宿泊者の心をつなぎ、朝の食卓が華やぐのは、いうまでもありません。
「普通、休みに来たんだから、ゆっくり寝ていたいと思うでしょう。 でも、早朝のニセコは、最高に良いんです。写真集にあるような景観を実感できたり、たくさんの家畜に出会って、田舎の生活を体感できるし、牧場ツアーの話をすると、みんな気合いで起きてきます。」 宿泊客の喜びは、オーナーの喜び。 ”仕事”を語るmilkyさんは、実に楽しげです。
総合的な力量が必要 だから家造りは面白い
ミルキーハウスの名称は、milkyさんの前職と設立経緯、そして「搾りたてのミルクで、おもてなし」という思いに由来しています。
milkyさんは、関西の大学卒業後、商社系の会社に勤務していましたが、分業化が進む現代社会のあり方に疑問を抱き、「生活力のある生き方」をめざして脱サラを決意、北海道の開拓者の気概に相通じるものを感じ、大好きな北海道で生活体験をしたいと、牧場に飛び込みました。
しかし酪農実習生になって1年たった頃、牛乳の生産調整が始まり、酪農経営を取り巻く環境が変貌。
「実習生として働いているだけじゃ面白くない。自分たちが、一から出来るものをやってみたい。」そう考えていたところに、耳寄りな情報がもたらされました。
ニセコで、山やスキー好きの人が、山に住みついて手造りの家を建てロッジをやってるというのです。
「ニセコに来てみると家造りから始まって、自分の趣味を仕事にして、たくましくも気楽にやってる人達の、世間離れした姿に、あこがれを感じました。」
昭和54年、25歳の時にペンション経営を計画。道内の牧場で知り合った仲間の協力を得て、「出来ることは、自分らの手で」を合言葉に家造り、店作りに熱中して 同55年12月、オープンにこぎつけました。
「内装も家具も手づくり。2年目から、客室の改装を始め、庭が広がり地下室が出来て、屋根裏も、 一息ついた頃から、テニスブームをはじめとしてリゾート客が、滞在を目的に増え、、さらに、ああしたい、こうしたいところが出てきました。」
自ら発想し、アレンジし、よりよいところをつなぎ合わせて形作っていくことが好きで、得意なmilkyさんにとって、住なり食なりをデザインすることは、何よりも楽しく、アイデアは、尽きることありません。
ペンション村が、ミニ独立国に、ミニFM局開局 JAZZやクラシックのコンサート
JAMの製造、エコツアー レストランと活動は、広がっていきました。。
ペンション経営は、田舎の自然環境の中で、住と食をデザインしていくこと。それには、人が築いてきた文化を引き継いでいく、総合的な知識と技術が必要。 家造りと、食のデザインは、その大切さを教えてくれた大きなテーマ、今も進行形でエンドレスです。
フロンティア精神に燃え 新たな夢を育む
「ニセコには、ペンションが、40軒ほどあるけど、ウチは海外からのお客さん、多いですよ。」 milkyさんがそう言い切る理由は、いろいろありますが、まず英語版、中国語版を備えたホームページの充実があげられます。 ミルキーハウスで、フレンドリーでアットホームな宿泊が出来るのを期待して、または口コミで、年々海外からのお客さんが増え続けて、今では、創宿泊者の1/3以上になってきました。オーストラリア、香港、台湾からの旅行社が特に多く、冬には、2週間以上の方も来られます。地元の食材を活かした多彩なメニューや、地元の人とのコミニケーションを満喫していきます。
また、ボランティアで、「食事・宿泊場所」と「労働力」を交換する仕組みのWWOOF(ウーフ)にホスト登録しているので、ニセコでの生活体験を希望する海外からの、スタッフの申し込みもあり、国際色豊かです。
海外のお客さんは、インターネットでホームページを見て、問い合わせてくるので、英文メールのやりとりが、かなり重要。同時
にホームページのニュース編集など、深夜は、パソコン漬けになっているmilkyさんですが、山登り、自転車、マラソン、アルプホルンなど多彩な趣味が、すべてペンションの仕事に反映されているので、いたって健康的。
「この辺は、農道や林道が、編み目みたいに張り巡らされているので、今日はどこを走ろうかコースを考えるだけでワクワクします。お店とか施設はあまりありませんが、それなりにいい所もあるんですよ。」
自身の展望は、まず10年先を考えた体作り。そしてペンション経営で吸収したものをボランティア活動で社会に還元すること。 「日本を離れて、違う場所でやったら、もっと刺激的やろな」
まもなく○○歳。 20代に抱いたフロンティア精神は、今も健在です。