秋、豊饒の季節

秋のニセコは、豊饒の季節だ
 畑では、ジャガイモの中でも一番の男爵イモをはじめとして、スイートコーン、稲、豆類、デントコーン、ビートなどが、次々と収穫の時期を迎えてゆく。
 一面緑だった畑も山吹色に色づき、あるいは実を稔らせ、また枯れはててなど、姿を変えては、茶色く繋がっていき、忙しくたち働く農家の人の点景として、牧歌的な色合いを強めていく。
野山では、朝夕の冷え込みを感じるたびに、道端のイタドリや林の山ぶどうの葉が色付き始める。秋の深まりとともに、九月下旬には、羊蹄やアンヌプリの頂に初雪が訪れる。この頃から十月中旬までが、ニセコの紅葉が一番すばらしい時期である。観光客も、この頃を中心に年間で最高のひとでをみる。
 里山では、テニス・トーナメント、バイクのイベント、ハングライディング大会など、各種のアウト・ドアやスポーツイベントが開催され、ニセコはちょっとしたコンべンション・カントリーとして賑わいをみせる。
 さて、そのピークの十月初めの休日には、田舎町に珍しい、交通渋滞なども発生するほどだ。
 
 
ニセコ連峰は羊蹄山麓の高原に、お椀を伏せた様な山々を連ねて、日本海に没する中級の山岳帯だ。しかし、緯度の関係で本州の日本アルプスの二千〜三千b級の山々と同じぐらいの植生を持つため、その紅葉もダイナミックな色のコントラストに驚かされる。
また、この連峰を横断するニセコパノラマラインや、山あいの奥深くまで周遊できる林道も完備され、観光客は、車にのったまま、簡単に稜線や山容の仔細な眺望を得られる。
 この様に、”1千b前後の樹木限界まで、簡単に行ける”、というのがニセコの観光の特徴で、高山の紅葉を手軽に、しかも広域に見ることが出来る。
秋の歳時記
 山が、あでやかに姿を変える、九月中旬の羊蹄山(1,893b)がお勧めだ。
 一日がかりの登山となり、行ける人も限られるが、出来れば、避難小屋を利用した一泊の山行がお勧めだ。
この山には、周りの町村から5つの登山道があるが、最も楽なのが、真狩コース。登山口の標高が高いのが、人気の秘密。登り五時間、下り三時間のコース・タイム。九合目の避難小屋は、十月十日まで管理人が居り、利用できる(素泊のみ)。
山頂近くのお花畑には、高山植物の実がたわわに実って楽しいし、山麓では、山ぶどう、コクワの収穫も期待できる。
 
 九月下旬、天候が回復した朝方など、羊蹄山、続いてアンヌプリの頂上に初冠雪が眺められる。さらにこんな時には、朝陽に映えた、“三段階の紅葉”が、楽しめることも、、「頂上の白い雪」、「紅葉、」そして「山麓の緑」。
 しかし降雪が早すぎると木の葉が落ちてしまい、紅葉も冴えない。
 霜が何回か降りて日増しに寒さがつのる、という形が美しい紅葉の条件だそうだ。
 
アンヌプリ(1,309b)の紅葉は、十月初めから上旬にかけてピークとなる。頂上付近の紅葉が一週間も経つと、この山麗(400b)に降りてきて、さらに二、三日で街(100b)に降りていく。
 ニセコ連峰の紅葉では、ワイス側よりイワオヌプリ東面を望むのが、景観といい紅葉の質といい、すばらしい。
萌え立つようなナナカマドの赤が、この紅葉の中心だ。この辺からの眺めは、正面にアンヌプリとイワオヌプリ、後に羊蹄山と、スケール大きい。
 続く丘陵地には大規模な放牧地が広がって、この辺ではでは珍しい北海道的なランドスケープである。
 
次 に新見峠付近(新見温泉より車15分)、この付近の、ニセコ連峰西部は、人を見ることが希な、静かな山域だ。ニセコ連峰東部のずんぐりした山容とは変わって、北海道特有のなだらかに伸びた稜線が美しい。
 この辺のツタウルシの透明感のある赤い紅葉は、黄と緑とともに特有のリズムを作っている。
 さらに、一般公募によりネーミングされたニセコパノラマライン(道道66号線)のニセコ側から、チセヌプリの共和町側までは、全域がシャッター・チャンスになる。
 赤・黄・緑のバランスが絶妙で、とくにニトヌプリ西面に点在するダケカンバのグネグネ曲がりくねった白い幹がアクセントになって美しい。
 
 十月も半ばを過ぎると、この山麓にも初雪が訪れる。
雪は残った紅葉も落として、高らかに冬のシーズンの到来を宣言するかのようだ。五月中旬あたりに雪が解けきってから半年経たずして、再び雪との付き合いが始まるのだ。
 
 
ニセコの紅葉は、冬と交錯する、短かった夏場のフィナーレである。
  草木が活動から眠りへと移る際のあでやかさは、野山の豊饒だ。
  ニセコの秋は、畑の収穫から始まり、草木の眠りで冬を迎える。