雪国だより

 ニセコの冬は暖かい。北海道が好きでニセコに住み着いて12年目、今回厳冬期に北海道の東のエリアに行って、つくづく思った。
まあ、スキーツアーのお客様などに『ニセコの冬は、最高17〜
18度位ですか〜』 というと、『 それ、マイナスの話ですか!?』 と返ってきて、『信じられない〜』と続く。
たかがこれしきの事、道東や、旭川・富良野方面では、当たり前の、マイナス20度以下の寒さに比べれば、なんのことはない。
 ここニセコでは、帽子や手袋無しでも外に出られるし、まだまだ寒さを楽しめる余裕がある。元気な若い子は、部屋の中ならTシャツ1枚で平気にしてる。飲み会で盛り上がれば、雪の中に飛び込むのも気分が良い。
土地の人は、『
雪の降る分、暖かいんだ』と言う。
 さすがにニセコは北海道でも最大級の豪雪地帯、ミルキーハウスのまわりでは、3m以上の積雪を見る。
まさにスキーヤーにとっては、パラダイス。2月中旬の積雪は、ゲランで上部では、4.5m位だ。
年をおっては、世界中から”アスピリンスノー”という新雪スキーを求めて来るスキーヤーが増えている。オーストラリアでは、パーフェクト・ヴァージンスノーと呼ばれて、スキーやボダーのあこがれの的になっている。
 12月末から1月にかけては連日が降雪日、1月下旬からはスキー場でもリフト下の雪かきが始まる。リフトも雪に埋まるのだ。
 ハンディと思えるこの豪雪を利点に変えたのは、スキー、まさにスキーがあってこそのニセコである。
雪との戦いの毎日、住む者の憂うつにひきかえ、札幌や千歳空港からのバスをはじめ、リゾート・エキスプレスなどのアクセスは年々強化され、都会の喧噪はこのペンション村をも巻き込んでゆく。
 ここは、ポテト共和国と呼ばれる、ペンションやクラフトショップの20軒ほどの集まりとでもいおうか、要はペンションでもやって田舎で暮らせば、のんびりできるという、考えてみれば大胆な人々の集まりだ。
 だからあまり、いや、相当、話はまとまらない。時間もあてにならない。組織とか時の流れがいやで抜け出した人の集まりだと思うと、もっともな事だ。会議はなかなか始まらず、話もまとまらない。
 でもこんな仲間だから、おもしろい話がいろいろ飛び出してくる。『ペンション対抗、雪中綱引き』『スノーダイビング大会
』『クロカンによるバードウォッチング&フィールド・パーティー』『手作りカヌーの川下り』『アルプスホルン狂奏団』など・・・いいかげんだけれど、憎めない。目立ちたがりやだけれどダサイ連中。まさにイモチック、というかポテトチック。なんせポテト共和国なんです。
 ニセコの雪解けは五月中旬、花壇や庭土がようやく顔を出し、まず水仙が花を開く。続いてチューリップとクロッカス、ムスカリと、、
 ニセコの初雪は、10月下旬、コスモスや花壇のマリーゴールドは、まだ雪の中で咲いている。
11月の中旬からは、もう融けることのない根雪に変わり、雪との付き合いは半年を越す。
 『やっと雪が解けた』『もう雪が来た』 が一年の節分。そして春、夏、秋とクロスオーバーして季節は進む。
冬は楽章ごとの交響楽の様に重々しく過ぎ去って、 春は、どこのマチよりも待ち遠しくて、夏は、走り抜けるようにして、8月上旬を駆け抜けて、冷夏の時には2週間ほどで終わってしまったりする。
    
     ポテト共和国の冬は忙しい。   一年の半分以上を占める冬を楽しむ人の心は、外を向いている。
                  初めて雪は見た日のように、無垢で白い。